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紙屋悦子の青春
 病院の屋上のベンチに座る老夫婦。入院している夫を妻が見舞って話し込んでいる。突然夫が昔話を始めた。それは1945年3月末、もう敗色濃厚な鹿児島県にある妻の実家のことだった。妻の旧姓は紙屋悦子で兄安忠と妻ふさの3人で暮らしていた。両親は、たまたま二人で出かけた東京で空襲に遭って亡くなって、まだいくらも経っていない。そんなある日、桜もちらほら咲き始めた頃、悦子の帰りが遅いと言いながら、たわいないことで言い争う安忠夫婦だった。悦子が帰宅すると、縁談があると告げる安忠。相手は安忠の後輩の明石の同期で海軍航空隊の永与少尉だという。明石のことを内心慕っている悦子、明石もまた悦子に思いをよせ、紙屋家を何度か訪ねているのだった。しかし、その明石の紹介で二人で明日家に来るという。ところが、安忠は徴用で熊本に行かなくてはならず、ふさも同行することになり、悦子一人で会うことになってしまう。それで、残っていた小豆でおはぎをつくるのだった。当日、かたくなっている永与にいろいろアドバイスする明石は、さりげなく先に帰ってしまった。二人だけになり、必死になって気持ちを伝えようとする永与に心を開く悦子。明石は航空隊のパイロットで、特攻に参加することになっている。永与は同じ航空隊でも整備に従事している。二人は海軍飛行科予備学生の同期で、文字通りの親友であった。何日か後の4月8日の夜、出撃を明日にひかえ、紙屋家に別れのあいさつをしに明石がやって来る。型どおりあいさつの後、ふさが気をきかせ、二人きりにする。死地に向かう明石は、つのる思いを押し殺し、永与に後を託すという。何とも気持ちを表現できず「戦果を挙げてください」としか言えない悦子。玄関で見送った後、台所で泣き崩れる悦子。それから数日後、永与が悦子を訪ねてきて、明石の出撃の際、悦子宛の手紙を託されたと持ってきた。手紙を渡し、残された者として、明石の分まで悦子を大事にすると言う永与。悦子も「あなたが迎えにきてくれるまで、ここでずっと待っている」というのだった。
 戦争の最中でも、痴話げんかとか、両親の思いで話で笑ってしまう日常もあるものの、そのいっぽうで死を日常化してしまう戦争の現実が重くのしかかってくる。悦子の義姉のふさが、当時はなかなか言えない「早く戦争が終わって欲しい」という本音を言う場面はよかった。しかし、特攻へと駆り立てられ、淡い恋ごごろを秘め、最後に手紙に託して死に向かっていった青年とそれを受け止めざるを得ない当時の悲しい青春が見事に描かれていた。黒木監督の遺作となったこの作品だが、戦争3部作と言われている「TOMORROW/明日」「美しい夏キリシマ」「父と暮せば」もいずれも力作揃いで、これが文字通り最後になってしまい、何とも惜しいと思う。
 こうした作品で、もう再び戦争への道を歩んではならないと訴えが、ひしひしと伝わってくる。いっぽう現実は、安倍内閣による教育基本法改悪、防衛省への格上げ、9条を中心にした憲法改悪、それによって戦争可能な軍事大国へとレールを強引に引こうとしている。これまで戦後61年間、現行憲法下で、他国の人も含め「殺さず、殺されず」と平和を維持してきたのだから、この先もこのままでいいではないか。こうしたことが、先の戦争で犠牲になった人々の大半の思いであろうと考えている。この映画を観てますますその思いを深めた。

監督:黒木和雄
出演:原田知世、永瀬正敏、松岡俊介、小林薫、本上まなみ
2006年 上映時間111分
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テーマ : 日本映画
ジャンル : 映画

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