2010-11-18(Thu)
ボリショイ交響楽団で清掃員をするアンドレイは、ソ連時代この楽団の指揮者として有名だった。しかし、ブレジネフのユダヤ人排斥政策に抗して楽団員のユダヤ人を擁護したことで、全員が解雇され現在にいたっている。そんな、アンドレイが仕事中に見つけたのが、一通のファクシミリだった。それは、パリのシャトレ座からサンフランシスコ交響楽団が出演できず、その穴を埋めるための公演依頼が届いていた。アンドレイはその用紙を密かに持ち帰り、かつての仲間で現在は救急車の運転手をしているサーシャに相談する。それは、かつてのボリショイ交響楽団を集めてパリ公演に行こうというものだった。こんな突飛でわずか2週間という準備で、しかも本物の楽団に内緒でやることができるのかという不安がつのった。しかし、現在の暮らしには皆満足しておらず、何とか集めることはできた。そして、マネージャーとして、かつてアンドレイの指揮を中断させた、かつてのボリショイ劇場支配人のイワンに頼んだ。彼は現在も共産党の復権を目論んでいるのだが、その交渉術は強引でなかなかのものだ。ともあれ、パリに着いた一行は現地で調達した楽器を手にしたが、リハーサルすらできない状態だ。そんななか、世界的に有名なバイオリニストアンヌを指名し、チャイコフスキーのバイオリン協奏曲を演奏することにしたのだが、アンヌを育て現在はマネージャーをしているギレーヌとアンドレイは顔見知りだった。アンヌは自分の両親とは会ったことはなく、何か運命的に惹かれてこの演奏を引き受けたのだという。次から次に難題がふりかかり、果たして無事演奏は成功するのか。 ソ連時代の夢を忘れられず、フランスにやって来ても、仏共産党のかつての仲間を訪ねるイワンだが、かつての仕打ちを恨んでいる楽団員は誰も彼が準備した夕食会に参加しないあたりは、さもありなんと思った。だいたい人民芸術だのと政治的プロパガンダに合致しないものは一切排除するという悲劇はけっこう描かれてきた。そうした、かつてのソ連を知っている者には笑えて、かつ哀しいこの作品が浸みてくる。一方、アンドレイの妻は生活のため、現在のロシアで富豪やマァフィアの結婚式を豪華に見せるためのサクラの参列者を集める口入れ屋をやっている。時には、共産党のデモの参加者までも一人いくらでかき集めている。こんな商売までありといった皮肉も面白かった。
監督:ラデュ・ミヘイレアニュ
出演:アレクセイ・グシュコブ、メラニー・ロラン、フランソワ・ベルレアン、ミュウ=ミュウ
2009年仏映画 上映時間:119分
監督:ラデュ・ミヘイレアニュ
出演:アレクセイ・グシュコブ、メラニー・ロラン、フランソワ・ベルレアン、ミュウ=ミュウ
2009年仏映画 上映時間:119分
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